たしもなおよく研究してみますが、しかし――不思議な国だなア日本というのは。エジプトからかな。その御幣は。」
頭を椅子につけ天井を見詰めてそう云う久木男爵は、もうこのときから一同とはまったく別の世界に入っているらしく、笑顔も消えた孤独な眼だけぱちぱち瞬いていた。
「しかし、そういうことになると、世界の人間どもに港から港へ旅をさす幸福を与えてやるのは、いよいよ御幣らしくもなって来たね。よほど話が整って来たよ。」
由吉はパイプに火を入れて云ったが、もう今は彼について笑うものもなく、海からの夜風にガラスの冷えて来た部屋の中で、一枚の白紙に吸いよせられたように、一同は妙に静になってしまった。平尾男爵は手帳を出すと、「千八百七十七年と。カントルだね。」と呟いて記入した。そして「僕も帰り着いた夜、こういう風向きになろうとは思わなかったな。しかし、これで多少は僕の研究に方向がついて来たよ。東野君、君の専門の方はどうかね。その千八百七十七年前後のあたりは?」と訊ねた。
「そりゃ、勿論、立体も平面もこの世から姿をかき消した時代だよ。何しろ明治十年というと、西南戦争のときだからね。あのころは、隆盛の細君
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