激しく振り廻した。どよめきが次第にあちこちから膨れ上って来るにつれ、船は歩廊の高さを遥かに抜いてぴたりと動き停った。纜を投げかけたり、船梯を懸けたりする多忙な中でも、出迎えのものらの熱情的な騒ぎは一層激しくなったが、それに引きかえ船上の客は、妙に冷く静り返っているように見えるのが、この日もこの埠頭の特長であった。
「いるいる。おーい。」
 と塩野はまっさきに平尾男爵の姿を甲板から見つけて呼んだ。間近いように見えていても、船上との間隔はかなり離れている上に、周囲のどよめきに船まで塩野の声はとどかなかった。男爵は外人たちと列んでいてもそれらを圧するほど体が大きくく、ゆったりと鷹揚な身振りで片手を上げたが、まだ一同を探しあてない様子だった。その横から、いつもの無表情な東野が唇を割り、日に焦げた色で、こちらを見ていた。真紀子の姿は初めは見えなかったが、暫くして、前髪を高く締め上げた色白の婦人が東野の肩に片手をかけて、ひょっこり男爵との間から顔を出した。それが真紀子だった。
 船は長途の航海をやっと終えたという風に、潮湿りの錆を滲ませた胴から水を吐いた。船と歩廊との間の梯子のあたりに、匂うような
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