みると、何んとなく僕には分って来ましたね。」
 と矢代は真紀子の今の身の上に通じるものもありそうに思えて千鶴子に云った。
「あそこで、まあ――」千鶴子も真紀子の船と灯台との間を眺めつづけていた。
「あたしはあそこを船が入って来るとき、何んだかしらわくわくして嬉しかったけど、これで反対の人もあるのね。そしたら、やはりそうかもしれないわ。」
「僕はシベリヤから満洲里へ入るときだったな。あのときは忘れられない興奮を感じた。生れて初めて清浄無垢な気持ちになったと思ったが、――」
 こう云いつつも矢代は、千鶴子の船がこの埠頭へ入って来るとき出迎えもしなかった自分の理由が、何か得手勝手なつまらぬ思惑のように思われて苦痛を覚えて来るのだった。そして、突然右隣りにいた画家の佐佐の方へ身を捻じ向けて訊ねた。
「あなたはどうでしたか、僕は、外国の旅というものは、自分の中にどういう不潔なものや病根があるのか、検出しに歩いているようなものだと思ったんですが、つまり何んというか、隅隅から自分を照し出してみる、まア、レントゲン反応で自分を検出しているみたいなものじゃないか、と感じたんだが。」
「あそこは石みたいな
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