とが、やはり頷きがたいことの一つだった。勿論、久慈と真紀子の間が不和になったとの便りは、直接二人からの手紙によらずとも、千鶴子へ来るもので分っていた。しかし、その結果が東野と真紀子とともに帰る事情になったとは、そこに穏かでない空想が混って感じられた。およそ日本を出発の際持ち運んでいった道具や習慣はみな毀れ、人の性格まで一変させてしまう西洋の旅のことだったが、それにしても、表面放埒に見えつつ東野の底にいつも動かぬ慎しみだけは今も変ることはなかろうと思われても、それとてどのような変化があったか、これだけは人の想像の外だった。殊に真紀子の身の上は同情に値いすることが多かった。しかし、いずれにせよ、そういうことを一応空想の中に入れて考えても、外国にいるときの生活から推し測って、そのものの内地にいるときの生活は分り得られないことであった。またそれは彼女のみとは限らず、現に矢代は、あれほど親しかった久慈や東野の内地の生活もいまだに分らぬままに捨ててあった。それも一つは、まだ消え去らぬ西洋の幻覚の仕業とも解せられれば、個人に対する興味などおよそ物の数ではなくなっている、茫漠としたある観念に絶えず憑か
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