パリにいるとき外務省にいた関係で、塩野は戦争に関しては以来誰より敏感だったのを矢代は思い出した。
「それは分らないが、よし起ったところで、結婚は結婚でまた別だよ。他の観念を混えてこの際、考えるべきじゃないだろう。特に結婚の場合だよ――」と矢代は云った。
「そうかな、結婚の場合は特に考えるべきじゃないかね。ね。佐佐?」と塩野は黙っている佐佐に対い、君にも今はそれがあるのだろうという意味を含めた笑顔だった。
「僕は今は、何より生活費の問題でね。絵はさっぱり描けなくなってるし、君よりは辛い立場だからな。」と佐佐は眼を細めて光る波を見つづけたままだった。
「しかし、結婚は永久の問題だからな。それをそうじやない問題と混同して考えちゃ、どっちも考えられなくなるじゃないか。」と矢代は千鶴子と自分の立場をも考え描き、自然に意見を出すのだった。
「人それぞれ違うんだね。しかし、僕はやっぱり考えさせられるんだ。僕は写真師だから、戦争が起れば誰よりも真っ先に、飛行機に乗るに定ってるんだよ。そしたら、お先きに失礼させて貰うんだからね。君らよりは切実なんだ。」
「不易流行ということが、日本にはむかしからあるん
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