分へその手紙を挟んだ。
「寛平三年正月十三日、藤原基経歿す」
とその頁には忌日もあった、新暦なら季節も丁度今ごろで父の忌日より十日先だと矢代は思い、なお基経のむすめの穏子の方の忌日も調べてみると、これも天暦八年、正月四日となっていた。
これらの忌日の近さには別に意味があるわけでもなかったが、父の最後の夜に云った先祖の人物の名が、思いがけなくこの基経と同じだと思うと、ない意味もあるように矢代には思われてくるのだった。
しかし、とにかくそうしている間も、彼は疲れでもう眼が閉じそうになったので、先日から敷き放しのままの寝床へ入った。そして、すぐ眠ると、また父の夢を起きていたときの続きのように見てばかりいた。死んでいる筈の父が、いつの間にか半身だけ起してあたりを見廻している夢だったが、寝かせても寝かせても、父の姿はいつの間にかまた半身を起していて、じっとどこか分らぬ方を眺めていた。
「お父さんどうしたんです。」
と彼は夢の中で父に訊ねた。
しかし、父はやはり何んの表情もない静かな顔のまま同じところを眺めつづけた。彼も父から手を放してその方を見てみたが、そこには何も見えずただあたりが真
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