場男は皆の方に鍵を出して訊ねた。そして、手を出した矢代に鍵を渡してから、すぐ火を入れに裏へ廻っていった。ここでもまた、底で動くものの総ては単調を極めたものだった。
 一同は再び広場へ散っていって、寛ぎを取り戻しに思い思いの方へ歩いた。それは各自がいつか前に身に覚えのある悲しみを追想しているようでもあれば、また俄に感じた自分の生を噛みしめ直して味わい愉しんでいるようにも見え、矢代もひとり柘植の緑の葉に見入った。小粒な固い葉の中から小さい新芽の出ている柔かさが、彼の視線を放さず美しかった。
「お父さんお幾つでしたの。」
 暫くして、千鶴子は彼の傍へ来て訊ねた。
「七十一でした。」と彼は答えた。
「まア、そう、今日お写真を拝んで、あたしもっと早く、お目にかかっとけば良かったと思いましたわ。」
「僕も残念なことをしたと思いましたね。父には一度会っといて貰いたかったんだが、――そうそう、今日お手紙いただいて、どうもありがとう。まだ急がしくって、拝見してないのですよ。」と矢代は柘植の新芽から眼を放して千鶴子を見た。
「こんなときさし上げて、いけなかったんじゃないかと心配だったの。あれもう御覧になら
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