で、矢代もようやく二人が気の毒になって来た。そして、
「どうも今日は、すみませんね。」
と、彼は突然千鶴子に対って云い遅れた礼をのべるのだった。
「いえ、あたしこそ――」
千鶴子が一寸彼を見て俯向く風情に小声で云うのを、やはり、自分の悲しみを別け持つことに努めていてくれたものの一言だと、彼はたしかな喜びを覚え、懐中に潜めたまままだ封も切らぬ手紙のこともちらりと頭に泛べたりした。
火葬の準備の出来た報せが来て一同は茶店を立った。竈場の周囲の常緑樹の葉の色が、ここのは特別に際立って鮮やかだった。柩を降ろした空の霊柩車が、日蔭に落ちている氷を踏み割って去っていった。その後からまた新しいのが入って来たりして、幾つもある同形の柩の中から、矢代は父のを見わけてその前に立つと、抱きかかえたときの重量が急に目前の閑寂な白い方形から射し返して、ずしりと引き込まれたように切なく胸が詰って来た。聞もなく、竈の観音開きになった鉄の戸が左右に開いて、そして、父の柩はそのまま狭い口へ詰め込まれた。ぴたりとまた戸が閉って鍵がかかったとき、天空高く放つ砲弾の装填を終えたように、
「どなたです。この鍵。」
と竈
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