幸子の声がもう勝手の方から聞えて来た。矢代は叔母夫婦や従兄たちのより集っている奥の間へ出ていって、葬の日取りを皆で定めた。母は一日でも永く父を傍に置きたい口振りになろうとするのを、矢代は親戚たちの迷惑なことも考え、日を繰り早めてみるのだった。母も別に異議を挟まず、素直に彼の意見に従ったので、葬式は二日後になった。その後、婦人らの手で経帷子が忙しく縫われ始めた。
夜になり棺が家へ届いてから皆で父の湯灌をした。素足に草履を穿き襷をかけた彼と、母と妹と、それに従弟も加わった皆の同じ様子は、雪の夜中どこかへ仇討に出かけて行くような勇ましい装束だった。それも緊張した表情を泛べているとはいえ、見馴れぬ異様さに、互に顔を見合せて一寸笑った。そして、それぞれ父の身体をアルコールで拭き浄めていくのだった。母と幸子は頭と胸を拭き矢代は胴と足へ廻った。
父の身体にはもう薄紫の斑点が泛んでいて、筋肉を圧えてみる指先に弾力が感じられず、たしかにこれはも早や父ではない物体に変っていると、矢代は思った。
拭き終ってから、皆で父を吊り上げて棺へ納めようとしたとき、背中が汗ばんだ温くもりで湿っているのに、死臭が幽
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