にも、この土地は地主から借りていてまだ自分の物ではないのだと思った。自分の手で耕すことの出来る範囲の狭さでも良い、若干の土地を握ってみたい欲望を彼は強く感じて来ると、それも父から貰った金銭で買い需めたくはなく、自分で得た金銭で需めねば、身土不二の意の深さもその根さえ識りがたいと思えて残念だった。そう思うと、外国で使った金銭の額でなら、今打つこの畑の広さも手に入る見込みがつき、今さら彼は、一打ちごとに失った額の重さが身に感じられて来るのだった。
 霜柱のため砂を浮き上げぼそついた土の表面が、彼の後から鮮やかな黒さを蘇らせて進んでゆく。ほんのりと温い土の香だった。矢代はこの畑に撒く肥料も、自分の家族の体中から出た物のみに限ってみたいと思った。そして、そこから生えた野菜でまた一家の身体を養うことを考え、土と血との循環も考慮に入れたかった。それにしても、なお彼に残念なことが一つだけ、頭の底から絶えず脱けず彼を追って来た。それは航海の船中で起ったある日の小事件だったが、丁度船がコロンボを出たころの夕食の後である。船客たちが集ってなごやかな雑談から無遠慮な談に移って来たとき、ある商務官が、弁護士を
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