のを妨げそうな気味もあった。
「新年になると、社長の久木さんが社員を集めて訓辞をされるんだが、一年にたった一ぺん、そのときだけ顔がみられるきりなんだからなア。」
と、こういうことを洩らしていたある日の父のひと言が、どういうものかいまだに矢代の耳の底から脱けなかった。
父はそのことを一年中の何よりの光栄に感じて云っていたのに、それに自分は、今は目前対等に久木男爵と会いながらも、父のその悦びを隠そうとしている時代の子供になったのだろうか。
それを思うと、矢代は自分の黙りつづけているのが苦痛だった。しかし、この夜は彼も、男爵とのそんな些細なことで心を痛めていられるときではなかった。さきからも暗黙のうちに由吉と侯爵とから間断なくうけている査問の視線も、また軽からず身に感じた。それもこれも、すべてはただほんの暫く、自分が外国へ行っていたためばかりに起ったことだった。
彼はそのようなことも知らずにいる千鶴子が、今は何より気の毒に思った。それも、自分がどんなに振り払おうと努めても、いつか身近によって来て去りそうにもない人だった。いったい、何ぜこの人は自分の傍へなど来るのだろう。
「あたしは日
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