南坂を登った裏の高台にあった。重い閂のかかった両扉の門柱の間から玉砂利が見えた。矢代が塩野と連れ立って門を這入ると、寒むげな唇の色で、肩を縮めて出て来た大男の玄関番が二人の名を訊ねた。緑青の噴き出た樋の傍に皮の爆ぜた松の幹が逞しく、厚い甍の反りの上に枯松葉を落していた。
 塩野はもう勝手を知っているらしく先に玄関を上った。花鳥を描いた衝立の後は暗かった。冷たく光った廊下を奥へ渡って行った右手の所に応接室があったが、そこには人の姿は見えず、ただ外套が幾つか置いてあるきりだった。
「君、よくここへ来るの。」
 と矢代は塩野の置く外套の傍へ自分のも揃えて訊ねた。
「ああ、ここは三度ほど。――こちらの方が気楽なものだから、あの侯爵はここの方が好きなんだよ。」
 と塩野は云いながらまた部屋を出て、なお廊下を奥の方へ幾つも曲った。背丈を同じにした南天の群生した中庭を渡り廊下が通っていた。実の赤くいちめんに揃った中を廊下が厳しく光り、そこを行く矢代の眼に、裏庭の広さを示す小松林の一端が、おおどかに曲った裾の美しい線を白い砂際によせていた。
 矢代は塩野を先にやらせて立ち停った。そして、暫く中庭の美し
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