でいる自分だと思った。しかし、さまざまな思想の流れの中を突き抜けて来た強靭無類なもののその美しさも、こうして胸に受ける白刃の冷たさ鋭さと映るのが――この自然に対決を迫って来て熄まぬものは何んだろう。――
明らかにただ美術として眺めていられぬものが、この科学寺のどの一枚の写真の陰影の中からも射していた。またそれは、幾度となく世界を覆していってまだ熄みそうにもない不思議なものだのに、それを思わぬ限りは、誰も彼もこの写真の前をただ過ぎぬけて通って行くだけだった。その無邪気さの中には、なお一層ぴちぴちと跳ね返った、哄笑するものの不思議な力が潜んでいるのだと、矢代は思った。それらの群衆の誰もは、皆ほとんど異端者ばかりだった。
「どうも写真というものは実物を考えさせて困るね。」
矢代は狂人のようにノートル・ダムを撮りつづけた塩野の熱心な姿が泛んで来て、傍の塩野にまた云った。
「少しぼかしになってるが、やはり君は考えたなア。」
「うむ、少しぼかしてみたんだ。この程度にぼかしたいと思うそこんところが、どうも難しくってね。」
「そこのところか。なるほどね。」
塩野というこの写真の達人の苦労が、カメ
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