思って、それで実は、さっきも、ああいう失礼なことをお訊ねしたんですよ。訊ねざるを得ないじゃないですか、僕とすれば。」
 矢代は食い物のこともうっかり忘れて云ったので、声も幾らか高かった。
「でも、あのときは無理だわ。あなたの仰言り方があんまり突然で、何んだかあたし、踏絵を命ぜられたみたいに思えたんですもの。」
「踏絵か、なるほどね。」と矢代は云った。
「あなたの身代りに、僕が踏絵をしようというときだったのに。――実際もし日本が徳川時代に、実権が幕府になかったなら、キリシタンの大虐殺はなかったですよ。もしあのとき明治のように、古神道が法律を動かす中心だったら、踏絵などという残酷なものはなかったと僕は思いますね。」
「じゃ、あなたのなさる古神道のお祈りっていうのは、どんなに仰言るの。」
「人のは知らないが、僕のはただイウエと発音するだけなんですがね、これを早くいうと、いわゆる気合みたいになって、エッと聞えるけれども、まアそれでも良いのです。あなたなんかのは長長と、他宗に聞かれちゃ困るようなことを、云わなくちゃならぬのでしょう。」
「イウエっていうのは、それはどういうことを意味するんですか。
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