食事中に吸物の出来るようストーブにかけて三人は御飯を初めにかかった。こんにゃくの白和はとくに良い出来だった。千鶴子は自然薯のとろろの味を褒めたが、これは少し味が濃すぎたようだし、生椎茸の揚物は油が悪く期待を裏切った。その代りに御飯がいつもより上手に炊けているので、塩気の利いた物が美味に感じられる食事となった。食い物の味など槙三には分らないらしく、出るものをみな黙って食べていたが、鶏だけは特別気に入ったと見えて、爪附きの片足をひっ掴んだまま、口もとをバタの油で濡らしては必死に筋を食い破っていた。
「あなたのプウレオウリ、思い出すわ。この方ね、パリで若鶏ばかし上ってらしたの。一度鶏供養なさらなきゃ、罰があたりましてよ。」
 千鶴子のそう云うのに矢代は、たしかにそれもそうだと思うのだった。
「ほんとに僕はパリで何百羽食べただろう。一度鶏供養をしよう。その供養でまた食べるか。」
「どこの料理が一番お好きでした。」
 と槙三は訊ねた。この同じ質問はこれまでに度び度びされるため、矢代は答えるのに、いつか本当のことが云えなくなってしまっていた。
「僕は鶏のことを思うときだけ、一度外国へ行きたい
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