然、風土からこの国を考えても、誤差の甚だしく生じるロシアだと彼は思ったが、ひところこの国に栄えた思想を範とせよと各国の知識階級に呼びかけた者の勢い旺んだった年のあったことも、すべては当時栄えた唯物史観という、ある種の科学説の力だった。
「いったい、ギリシアは何ぜ滅んだのだろう。」
と、こういうときには矢代はいつも思うのが癖だった。今も彼が雪の山小屋へ勉強に出て来たのも、科学を世界に伝え残したこのギリシアの滅んだ理由を調べたかったからである。そして、矢代の先祖の城を滅ぼしたのも、つまりはすでに滅んでいるこのギリシアの残した科学のためであり、それもカソリックという宗教の仮面を冠って不意に襲って来た科学であったのに、今もなお彼までそれを調べねばならぬとは、身を省みて怪しまれることだった。
「とにかく、あれはおかしな代物だ。」
と矢代は、こんなときには薄笑いを洩してギリシアの文明について考えるのだった。
また彼のその薄笑いは彼ひとりのみならず、東洋共通の表情にも通じたもののようでもあり、恐らくそれも東洋だけの愁いでもなく科学の仮面とされて遠く波路を渡り、東洋に押し出されて来たカソリック自
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