からあまり離れていなかった。二十畳敷ほどの両側に寝台が四つ、窓際にベンチ代りのが二つと、都合六台あって、椅子、テーブルを中に炉代りのストーブもあり、内側の丸木はすべて白ペンキ塗りのため室内は明るかった。自炊用の道具箱も戸棚の中に揃っていた。やがてスキー客の出揃うころになると、この小屋も満員になりそうなので、矢代の勉強もするなら雪の浅い今のうちだった。
ここは特に朝の景色が美しかった。山際の雪に接した空の色の鮮かさは、醒めたばかりの眼を射抜き、貼りつけられたように暫く視線がそこから動かなかった。そこへさし昇って来る朝日に照り耀いた雪を冠ったまま、朧に静まる薄紫の枝枝の繊細さ、――矢代は顔を洗ってから一寸雪片を口に含んで菜を截り、火をストーブに焚きつけてそこで湯を沸かすのである。自炊はさして面倒なものではなくむしろ楽しかったが、後の洗い物が苦手だったから、これは附近の老婆に御飯と一緒に頼むことにした。
二三日は矢代は小屋からあまり外へ出ず書物ばかり読みつづけた。宿から初め小屋に移って来たときに感じた辛さは、宿で女中に見張られた気苦労よりも暮し良く、この生活は自分の理想の一つだと思えたほ
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