長時代に京都へ耶蘇寺を建てたポルトガル人のフロイスという宣教師が、こっそり本国へ送った書翰集を読んでみたら、日本という国は大変な文明国だ、むしろ自分の本国よりも文明が高いと思うと、そんなに書いてあるんだ。それも本国の法王へ出した報告文の中にあるのだから、誰もそこだけは見せたくなかったと見えて、リスボンの博物館からつい近年出て来たばかりの原稿なんだよ。僕はそれを読んで、非常に嬉しくなってね。さっそく久慈に報らせてやろうと思ってるんだが。」
 こういうことを云うときでも、矢代は、塩野の視線を日本の内部へ今より深く潜り込ませてみたい気持ちを、どこかに感じていることは、千鶴子に対った場合とあまり変りのない自分だと思うのだった。また事実塩野や千鶴子に会うたびに必ず想い起す西洋の幻影の盛り上って来る勢力からすり脱けるだけでも、矢代は日ごとに工夫を変えねばならぬ、人知れぬ苦労を要した。もしこれがいつもつづけば、西洋で会った人のうち、忘れることの出来ないこれらの人とも別れて行くかもしれぬ危ささえ感じるのだった。そのくせ、塩野も矢代も黙ってしまうと、彼は前から気になっていた千鶴子の病いのことが重く頭に拡
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