枝枝が強い弾力を貯え得られたことは、それ以来引きつづいて逞しく育って来た今の姿を見ても分った。
街へ出るたびにこの欅の下へ自然に立たねばならなかった矢代は、こうしているまも、双方の意志までいつか通じるように思われ愉しみだった。また彼はこの樹を見上げたときが自ら正しい考えを得るように感じてからは、その日の吉凶なども判断したくなったりして、知らず識らずそれも習慣となると、いつの間にか千鶴子のことなど、自然とつい欅と相談するという風な癖にもなるのだった。
千鶴子が母から他の男と縁談を奨められている苦しさを洩して来た手紙を見て以来、特にこの相談めいたことの去来する親しさも増すようになった。
「ね、君、今日もまただが、千鶴子さんのことは、僕から何も特別に云わなくったって善いとも思うんだがね。抛ったらかしといたってさ。」
と彼は、こんな自問自答風な調子で訊ねる。
「しかしまア、気にはかけておらないといけないよ。」
と欅が答えるように思う。
「それもそうだが、千鶴子さんの母親が他の男に意志を向けているというなら、これは持久戦になりそうだよ。もっとも、僕の母親も千鶴子さんがカソリックだと知れば
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