べては過ぎ去った日のことだと、また肱を枕に彼は畳目に眼を落した。誰の仕業でもない、時でもなければ、人でもなく、自分でもない、地上の出来事のうちもっとも恐るべきことで、そしてまた平凡な一事実に関したことだった。しかし、それがも早や誰に通じることだろう。それもたとい異国の旅をしたことのないものであろうとも、共通に身に襲いかかってやまぬ、日常茶飯のことだのに。――
「そうでしたか。しかし、それは失敗ったなア。」
とまた暫くして矢代は云って笑顔を撫でた。もし自分が久慈や田村のように、寝ても醒めても、ヨーロッパ、ヨーロッパと浮ごとを云って旅をつづけていられたなら、どんな仕合せな旅だったことだろうと思った。
西洋から帰る多くのものが、船中から神戸を見て、思わず悲しさに泣き出すというもの狂わしい醜態がある。それはいつもあることだが、しかし、天平平安のむかし遣唐使の去来した船中でも、幾度久慈のような青年に演じられたことだろうかと、矢代は思った。それらのものも、言葉が通ぜず通訳を伴って行き、同僚たちから受けた屈辱に耐え得たものたちが、帰って多くの仕事をし上げた。それに引きかえて、言葉に練達したものの
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