云ったのではなかった。振り返って旅中のことを思いめぐらす自然の言葉が、加わる疲れとともに、このように弱まって出たのであった。それは考えると物足りなく寂しかったが、そうかといって、この夜も昼もフランスでなくては納まらぬ田村の前で、ここのこの小料理屋の木目が、今の僕には神殿の木目の美しさに似て見えるのだと云ったなら、この田村は何んとふれ廻って歩くことだろうと、云いたいことも、一途に彼は抑え慎しむことに努力した。
「絵は見たか?」とまた田村は、何よりそこを自分は一番希んでいるのだと云いたげな様子で訊ねた。
「見た。」と一こと云うと矢代は黙った。
「どうだった絵は?」
「意外に下手な絵の多いのにびっくりしたね。」
「そうだろうな。」
 田村は、お前のことならと云う意味も含めて、もし自分ならと、云いたいところも、歯痒ゆそうに微笑にまぎらせて、その口に猪口をあてた。矢代はこれから会うものごとに、みな誰も田村のように同情を自分に示すさまがありありと感じられ、自分にとって一番難しいのは、何んといっても日本の内部のこの外国語を習っている神官たちだと、直覚するのだった。そして、それも所詮は他人のことではな
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