のある眼に変った。
「中田さん、見たでしょう。明日ベルリンへ行くのに、いい土産になりましたね。何よりのお土産だ。ベルリンはまた違うからな。」
塩野にそう云われ、さきほどからますます考え込んで黙っていた中田は、「うむ。」と難しげに頷いたが、
「いよいよ困った土産だ。とにかく、ベルリンの郊外へでも行ってから、ひとつゆっくりと考えよう。」
呻くように中田は一層顎を襟に埋め込み、腕を拱いてテーブルの上を見詰めてまた黙った。何んだか強い弾丸に一発致命的な部分を射抜かれた様子である。舞台のような道路の上で、まだ立って動かぬ警官たちの鉄甲の縁から雨の滴りが垂れて来た。
「僕も二三日したらセヴィラの方へ行くよ。少しパリを離れてみなきア、何んだかよく分らなくなった。」
久慈はそう云いながら真紀子からハンドバッグを取り、中から鏡を出して幾分腫れ気味の頬を映してみた。
「みんなどっかへ行っちまうのか。淋しくなるなア。」
と塩野は前の元気も急になくなり雨空を眺めて歎息を洩した。空がだんだん暮れかかって来ると、もう通りには警官隊のほかほとんど人影が見えなくなった。
その夜食事を終えてからトリオンフ
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