代はその方へ馳け進もうとしても荒れ狂った群衆に遮られ、もう自由に体が利かなかった。並んでいる自動車の窓という窓ガラスが滅茶苦茶に叩き砕かれていった。
ひき裂かれたワイシャツから血を噴き出した赤い徽章の男が一人、叩かれても突かれても、跳り上ってはまた群衆へ幾度でも飛びかかっていくのがあった。そこへ新手の群衆が殺到して殴りかかる。もう血みどろになったその若者の顔は目鼻も分らぬながら浮きつ沈みつしていた。政府党の警官たちは、その間にも誰彼なく検束にかかっていたが、どれもみな右翼のものを抑える検束だった。
奪い返そうとするもの、それをまた引きつれて行く警官らとの間で、暫く揉み合いがつづいていた。しかし、群衆はも早警官の活動力には手にあまるほど膨脹していた。暴れ廻っている中心の輪が拡がって流れ、下へ下へと爆け流れて行こうとしているときである。
今までぼつりぼつりとより降っていなかった雨脚が急に激しくなって来た。すると、いつの間に顕れたものか市直属の鉄甲の警官隊が、鋲を打ち込むような固さで一人ずつ群衆の間に立ち並んでいった。思いがけなく中心核から遮断された群衆はまだどよめきを続けたが、不意に
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