も流行らぬ店のようで、手持無沙汰な愛人たちの顔つきだった。
「おい、やってみようよ。手さえ横へ出していなきゃ絶対安全だよ。皆でやろうやろう。」
久慈はそう云いながら矢代を曳いて無理に自分がさきに立ち段を上った。おじけるかと思った真紀子や千鶴子も素直に後からついて来た。空いた自動車の一つに乗った久慈は横へ真紀子を乗せ、他の車に矢代と千鶴子が乗って無造作に運転し始めた。二人がきっちりと腰を並べられるほどな狭さの低い自動車だったが、さて走らせるとなると、あんまり自由にどちらへでも辷りすぎる不安定さで、なかなか思うようには動かなかった。
「ははア、これや、いよいよ真人間だ。」
と久慈は矢代の方を面白そうに見て笑った。少し辷り出してまだ笑いの停らぬ間に、もう残酷に一台の車が突進して来だ。そして、「あッ。」と云う途端に横腹へひと突き衝っていった。大きな音の割りに痛さを身に感じない具合は急に久慈を大胆にさせた。彼は電流の不安定さに任せて群がる自動車の中へ辷り込んだ。みな誰も手もとの狂いのままに相手の狂いも赦している寛容な顔がひどく久慈に気に入った。初めは人に突き衝ることよりどうして避けようかと気
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