「どっちも生還おぼつかないかな。」
 笑うところも考えればもう二人は笑えなかった。
 久慈は西日の照りつける中へ動かす矢代の足を見ながら、彼も同様に無数の手傷だなと思われ自然に労わりの心が起って来るのだった。


 その夜千鶴子のホテル附近の広場に祭があるというので、夕食後四人はそれを見物に出ていった。広場に繁り揃ったマロニエの幹の間で、いつもとは違った篝火のような明るい電灯が輝き、色めいた屋台の夜店が沢山出ていた。機械の中から吹き出る綿菓子を雪のように積らせた店や、彩色入りの長い飴棒を束ねた店や、玩具店などと並んだところは、日本の縁日に似た町祭だったが、その間を歩く人人はあまり嬉しそうな様子もなかった。四人は夜店の天蓋の下を散歩してから見世物の前に立った。大きな本物の馬ほどもある背の高い廻転木馬が眼を怒らし人も乗せず街路樹の青葉を擦りつつ廻転している様は、空を馳けぬける駻馬のように勇しかった。その横に円形の音楽堂のようなものがあって、コンクリートの狭い床の上を、二人乗りの豆自動車が十数台も動いていた。
 四人はそれを一番面白がって長く見ていた。天井の全面に張られた鋼鉄の網には電流が
前へ 次へ
全1170ページ中471ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
横光 利一 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング