「あら、だって、久慈さんあんなに淋しそうなこと仰言ったじゃないの。よしみだなんて――。」
 頬を染めて少し早口で云う千鶴子の振り返った眼に、久慈はまだ揺らぐ心の閃めきを覗きとった歓びを感じたが、それも過ぎゆく人の視線の美しさかもしれぬと、また追いゆく心を沈めるのだった。
「千鶴子さんは、僕をこんなにしたのは自分の責任だと思ってるんじゃないかな。しかし、それならそれは間違いだよ。それや、君と僕とがマルセーユで別れてから君にとった僕の態度は、船の中とはお話にならぬ不親切さで、一度お詫びをしなくちゃならんと思っているんだけれども、僕のような青年が田舎の日本からぽッとパリへ出て来ちゃ、当分は頭がいやにくるくるするんだよ。実際、僕はしばらく日本のことなんか考える暇がなかったのさ。そこへ君がまた顕れたのだから、逆さになってる僕の足ばかりが君の顔に衝ったんだ。何も僕は弁解の要を感じるわけではないが、しかし、あれほど君と親密だったのにこんなになっちゃ、たしかに僕の方が君をそんなにしたんだからな。君が僕をこんなにしたんじゃないんだよ。」
「ほんとにあのころは、あなた親切にして下すったわ。」
 頼りのな
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