論語をこれから講義しに行こうてんだ。」
「でも、あなた嬉しそうね何んだか。」
「今日起きてみたら、心境に少し変化が起ったんだね。昨夜は君を見なくちゃどうにもやりきれなくなったんだが――たしかに昨夜は君に僕は恋愛をしたんだ。君んとこの階段を上る前に、広場のベンチに腰かけて窓を暫く眺めてただけなんだよ。ところが、そのうちに胸がそわそわして来てね、これはいかんと思っているうちに、もう階段を上っていったんだ。ところが今朝になってみると、何アに、そうでもないんだよ。けろりとしてこの通りだ。危機だなアこれや。」
パンをち切りながら暢気そうに云う久慈を、千鶴子は心細そうな眼で眺めていてから、
「じゃ、あたしも危機だったのね。」
と云ってくるりとまた欄干に肱をつき窓から下を覗き変えた。
「いや、いろいろ理解に苦しむことが多いよ。これをいちいち説明して歩かなくちゃならんというのは、たしかに健全じゃない。君だって今日は僕を慰めに来てくれたんでしょう。」
「そうよ。だって夜中にひとりでいらっしゃるなんて、理解に苦しむわ。ドアなんか開けちゃいけないと思ったんだけど、何んか急用でも出来たんだと思ったのよ。ほ
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