ものは、パリの人間でも恐らく一人もいないだろうな。」
 塩野は願いのかなった喜ばしさに上気して云うと、種材に溢れたあたりの風景の角度を早や急がしそうに見詰め始めた。どの怪獣も欄干や石柱と同じく、朽ちそうな黝ずんだ色に苔まで生えている。剥げ落ちたところもあれば、おびただしい鳩の糞で形の不明になった怪獣もあった。
「もうこれや、考えていられないや。」
 と云うと、塩野はイコンタのシャッタを矢鱈にぱちぱちと切り放した。それもあちらこちらと誰かに追われているような風で、気もそぞろにもう後の三人のいるのも知らぬげだった。
「さア、僕らも俳句だ。」
 と東野も云って裏口の方へ廻っていった。久慈は塩野や東野のようにそんなに熱心になる芸術心は何もなかった。むしろ、こうしてぼんやり街を見降ろしている方に興味があったが、しかし、二人のように夢中になれる何物か自分もほしいと羨ましく思い、また、何んとなく二人の様子を馬鹿馬鹿しくも思ったりしつつもその間に挟まって、取り残されたような脂っ濃い自分と真紀子が淋しくも感じられて来るのだった。真紀子は夕暮に近づいたパリの景色を眺めながらも、もう久慈から放れることが出来
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