した。これだ。」
 塩野は人に知られぬようにあたりを見廻してから、上衣の下から大きな鍵を覗かせた。錆びの這入った、長さ五六寸もあろうと思える五本の鍵が蒲鉾《かまぼこ》板のような板の一点に、それぞれ紐で結わえつけてある。久慈は、塩野の脇腹からちらりと眼を開けたパリの歴史の首を見た思いで、瞬間ぞッと鬼気に襲われ我知らず周囲を見廻して黙った。
「今日はこれや、死にそうだ。君たちも来てくれないかな。」
 興奮のため幾らか青くなって来ている塩野に、
「よし、行こう。」
 と久慈は云って立ち上った。
「三時半ごろになると事務所のものがいなくなるから、そのとき注意して行けと云ってたが、もう良いだろうな。」
「見られたってかまやしないさ。キリストに君は招かれたんだよ。」
 久慈は躊躇している真紀子に、
「あなたもいらっしゃいよ。千載一遇の好機だから、僕らも中で俳句を作ろう。」
「だって、恐いわ。そんな所。」
 尻ごみして進まぬ真紀子の腕を久慈は捕え、塩野のあとから裏門の方へ近よった。裏口から四人は中へ這入ると掃除のしてある部屋が二つあった。そこを通りぬけて階段を一つ上った二階のところにバルコンが見えた
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