棲んでいた理由で、パリの名称の起りをなすとともにまたパリ発祥の地でもある。ノートル・ダムは最初一見したときには、方形の時計台を二つ合せたような単調な姿だった。頂き近く菊花の弁を一二少くしたのと同じ紋章が、その形の単調さに威を放ち巷の塵埃をふき払う。近づくにしたがって、方形は驚くべき複雑精緻な変貌を重ねて来て、正門の扉のキリスト像、その右手の聖アンナの門扉、左手のマリヤの門と並んだ三つの門の、その真上のところ一列に、イスラエルとユダヤの諸王、二十八王の彫刻の立像がそれぞれの風姿をもって克明に浮んで来る。さらにその上の円窓に描かれたステンドグラスのロザスの美しさ、また一層上の柱列は、人体の解剖図に似た脊柱の周囲の整然たる管状の立体化となって、ノートル・ダムの怪獣を支えている。また一度び横へ廻れば、胴から延び下った両翼の姿の繊巧無類なある緊張、その優雅さ、――久慈はあらゆる運動態の原型がここに蒐ったかと思ったほど、全系列をささえた稜線の荘重で、雄勁果敢なおもむきに我を忘れて見惚れていた。
このルネッサンスに反抗したゴシックの美しさは、それはたとえば何んと云えば良いだろう。久慈は、魚の肉をし
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