でいいのかな。」
「分ったら台なしだろ。」と東野は云った。
「そうだ。記念に一つ、写真を撮っといてやりなさいよ。」
 と久慈は塩野の肩をつついて笑った。
「溜らんね、そう勘が早くちゃ。日本人は芝居が下手い筈だよ。」
 塩野は笑いながら繁みの中を、ジョルジュ・サンドの彫像の方へ先に立って近よった。お下げに髪振り分けて肩に垂らしたサンドの前に、小径をへだて、猪首のスタンダアルの横顔の浮彫があった。その二人の像の間で東野は、
「これや、どっちも十九世紀初頭の猛者だったんだが、そんなら僕は一つ俳句を作ろう。」
 と云って真面目に俯向きながら考え込む様子だった。久慈も東野に俳句の手ほどきを習ったこととて、ふと思わず釣り込まれて自分も句作する気が動き、そこに立ち停るのだった。
「俳句なの?」
 真紀子も面白そうにサンドの彫像をあらためて眺めてから、
「この方、別れの曲でショパンとどっかへいらしたあの方でしょう。」
 と東野に訊ねた。
「そうです。そのとき、こっちのスタンダアルはイタリアで領事をやっていたんですよ。」
 東野はスタンダアルの彫像の丁度後ろの方に立っているフロオベルの立像の方へ近よって
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