ってうろついていたものたちも、退屈まぎれにそれに和し拳を上げるものも多かった。
 矢代は千鶴子と一緒にまた街を歩いていくに随い、食事場だけとは限らず、少し大きな商店はどこも店を閉めていて、どの入口のところにも店員の通いを喰いとめる罷業委員が張番をしていた。
「いよいよ波をかぶって来ましたな。」と矢代は云って千鶴子を見て笑った。
 通りの店店が網目になった鉄柵の大戸を閉め降ろしているので、街は牢に入れられた囚人のように見え、灯を消されたショウウィンドウのハンドバッグや化粧品などの商品類も、手錠を嵌められて俯向いている女に似ていた。矢代は変れば変るものだと思い鉄柵の格子の外からそれらを覗いていると、
「どうなるんでしょう。あたしたち。」と彼を見上げておどおどした視線で相談する風情に見えた。
「とにかく、コーヒー一杯も飲めないとなると、考えなくちゃならんね。」
 もう間もなく千鶴子と別れなければならぬと考えることで、さきからかなり気力の疲れている矢代は、金銭は先ず持っていても餓えを満すに足りないというこの大都会の変動のさまも、亦多少は考えねばならなかった。
「こんなことが長くつづけばどうなる
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