イの後ろに、詰めよっている他の三人の服も海底の動かぬ昆布に似て見えた。頭の鉢の開いた支配人は矢代の傍へいつもよく来て、どうですこの料理の味は? と優しく訊ねたりしたことがあったが、今は両手を拡げたり縮めたりして、ボーイを鎮めることにひたすらこれ努めている最中だった。
「これや、この様子だと今日一日の辛抱じゃ駄目だな。」
 矢代はこう云いつつ通りに立って両側に続いているレストランやカフェーを見廻したが、どこもかしこもガラス戸を閉め降ろし、一人の客も入れていなかった。食事にあちこちとうろつき廻る度びに、どこでも拒絶されて来たらしい旅客たちは、ただ街を流れ歩いているだけだった。新しく食事に来たものらも事の真相を知るに及ぶと、通りで寄り塊ったまま、誰もひそかに薄笑いをもらして去ろうとはしなかった。そこへ罷業を奨励している政府の委員たちが、命令のまま確実に罷業が行われているかどうかを検べるために、巡視の自動車で街街を馳けて来ては、威勢よく、
「フロン・ポピュレール。」(人民戦線)
 と叫ぶと固めた拳を人人の前で高く上げるのだった。それはガラス戸の中の罷業側に声援を与えるらしい声だったが、食事に困
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