持ちでありすぎる二人だった。千鶴子も退屈さのあまりに考えついた趣向とはいえ、思い切って云い出したその企ては、氷河の断層を渡ったときのようなある未知の愉しさを矢代に与えた。これで嫉妬を感じれば申分のない芝居だと思ったが、千鶴子には信頼の方が先に立ち、手にあまる柔軟な滴りをまだ矢代は彼女から受けたことがなかった。一度それを受けてみたいとそう思うと、ついでにお洒落も今夜を機会にしてみたくなるのだった。
「あなたがピエールという人と行くのなら僕も一つ誰かをつれて行くかな。僕のお相手してくれるのは、まア真紀子さんぐらいなものだが、そうだ、真紀子さんに頼もう。」と矢代は膝を打った。
 千鶴子は一瞬笑いを停めて矢代を見たが、すぐまた前のような平静な美しさで、
「どうぞ、その方が退屈しなくっていいわ。」
 と笑うと、そのとき急に大きな声を出し始めた向うの、激論している日本人の方をびっくりした風に振り返った。
「何に云ってるのかしら。あれ。」
「議論だ、面白いよなかなか。」
 矢代は頭を後ろへ反らし議論嫌いの千鶴子のびっくり顔をさも楽しそうに見ながら、あまり千鶴子と仲良くない真紀子に頼み込む難しい方法を
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