った人なんだから、是非出席しなくちゃいけないってそう仰言るの。それであたし、それじゃと思ってお約束したんだけど、矢代さんも今夜オペラへいらっしゃいよ。ね。」
「そいつは困ったな。」
 と矢代は云って後頭部に手をあてた。千鶴子に愛情を覚えていることには変りはなくとも、別に取り立ててそれを打ちあけたことがあるわけでもなし、まして愛人でもない千鶴子の自由さを看視する気持ちはまだ矢代には起らなかった。
「でも、切符は今からじゃないと間に合わないわ。椿姫よ。もしいらっしゃるんだったら、あたしこれからオペラまで行きましてよ。」
 千鶴子は時計を出してみて、
「まだ一二時間は大丈夫、行きましょうよ。ね。」
「だけど、僕が一緒というわけにもいかないし、あなたの楽しんでるのを見せようって肚なら、話は分るが。」
「そうなの、お見せしたいのよ。」
 千鶴子はくすりと首を縮めて笑って頬についた雨を撫で落した。
「よし、そうまで云われちゃ、見てやろうかな。」
 矢代も顎を撫でつつ笑っているうちに幾らか得意な明るい気持ちになるのだった。友人同士としては千鶴子にあまり好意をよせすぎるが、愛人としてはあんまり自由な気
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