されたと同じ嫌悪を感じるのであろう。遠くから一二怒声に似た声も聞えて来た。
「大丈夫なの?」
と真紀子は小声で恐わそうに久慈に訊ねた。
「大丈夫さ。殺されるようなことはない。こんなことで殺されればもう中国は人間じゃない。動物だ。」
「だって、それや分らないわ。」
「しかし、支那料理のような美味い料理を造る国だから、中にはなかなか優れた人間もあるにちがいないでしょう。喧嘩は誰にも分らぬ方法で始末してゆくだろうと思うな。」
日本人のテーブルはどれも料理がまだ来なかったが、皆は黙って待っていた。すると、そこへ船で一緒の客だった沖老人が三島と二人でひょっこりと顔を出した。沖は船会社の社長を辞めて漫遊に来ただけでもうパリにいない筈だったし、三島も同様にベルリンへ機械の視察に行っただけだったから、この二度目の会合はむしろ奇遇で同級生と会ったように懐しかった。
「しばらく。あなたはイタリアへ行らしったという話でしたが。」
と久慈は立って白髪の見える沖と三島に挨拶した。
「イタリアから昨夕帰りました。明日の船でアメリカ廻りでまた日本へ帰りますよ。」
沖はベルリンから戻った三島ともホテルで偶然一
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