とを、そんな不真面目な言葉で片附けておしまいになるもんじゃないわ。もし間違いにしたって、それや苦しんでらっしゃるにちがいないんですもの。あなたの方があたし、よほどファッショに見えてよ。」
「何んだ。君はもうそんなに溺れてるのか。」
 と久慈は云うと突然空を仰いで笑った。
「何んでもあなたはそういう風儀に、物を解釈なさるのね。ほんとに意地悪よ。」
 しかし、久慈は千鶴子が矢代をファッショと云うことに同意せず、却って自分の方をファッショに見たということには、無下に彼女を無知として排斥するわけにはいかなかった。たとい自分が冗談に云ったとしても、千鶴子にたしなめられたことは、考えれば久慈も痛さを感じるのだった。
「僕の方がファッショか。まア、それは一応よく僕も考えよう。」
 久慈は窓から引っ込み寝台の上へ仰向きに手枕のまま天井を眺めた。
「だってそうじゃありませんか。矢代さんのような知識のある方が、ファッショになんかなれば、日本へ帰れば誰も相手にしなくなること定ってるんですもの。そんな損なことだとはっきり分っていることでも、どうしてもその方が正しいと思われたのなら、あたしそれで美しいと思うわ。
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