だからな。しかし、そう心配したもんでもないでしょう。」
「まア、いやな方。」
千鶴子の顔の染まるのをいくらか嫉妬めく心で久慈は見ていた。彼には誰が誰とどんなになろうと、そうなればなっただけパリ生活の深まりを見る思いに染まっていたときとて、千鶴子のとやこうと気遣う気持ちも、渦中に吸い込まれる花弁を見るようにまたそれも楽しみの一つだと思った。しかし、今日は千鶴子はどういうものかいつもより久慈には美しく見えてならなかった。
「久慈さんはほんとにお変りになったのね。何んだかあなたは、いけない変り方をなすったように思うわ。」
「矢代だってそうだよ。あんなに変えたのは君の責任も大いにあるね。このパリに来ていながらわざわざファッショになるというのは、だんだん日本人の君ばかりが眼について来たからだよ。世界が千鶴子さんばかりに見えて来てるんだね。早くもう矢代をつれて、あなた帰ってしまいなさいよ。あの男は堕落した。」
千鶴子の喜びそうな一点を見つけてそこへ捻じ込むような無理な久慈の攻撃も、千鶴子にはもう戯れのように見えるらしかった。
「ファッショだなんて、そんな――立派な方が真面目に考えてらっしゃるこ
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