ちらにいる限り有益だと思いますがね。」
「この通り、今夜はやられてるんですよ。」
と東野は矢代を見て云った。
「あなたがですか。」
「勿論、お向いさ。」
「馬鹿云え。」と久慈は頭を立てた。「この東野という人はね、矢代とよく似たようなことを云うのだ。ただ君より一寸落し方が上手だよ。だいたい、僕は日ごろから天下の公論に興味を覚える方だから、世界に通用する話じゃなくちゃ、話したって損するだけだと思うんだ。ところが、君や東野さんは、日本でだけより通用しそうもないことばかりに、話を引っ張り込んで、僕の呼吸を停めてしまう計画ばかりに夢中になるのだ。僕ら日本人の考えを、日本でだけ通用させて得得としていられる了簡が、一番日本を誤るもとだ。それや、もう定ってるじゃないか。そのどこに誤りがあるんだ。」
「自分を誤ったものが、世界を救おうってわけか。」
と矢代は山で休ませて来たばかりの鋒さきを一本ぶつりと刺し入れた。
「何んだそれや。」
久慈は矢代を暫く睨みつけて黙っていたが、すぐにやりと笑うと、
「君は日本を愛しているのじゃない。日本に恋愛をしているのだ。恋愛だけは科学の歯は立たんからね。」
「歯の
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