を飛び渡った矢代は瑠璃色の割れ目の底を覗き込みながらじっとしていた。
「はい有難う。この次、洞があったら、そこからこちらを覗いて下さらない。そこも一つ撮りたいの。」
細かい砂を少し含んでうす汚れている氷の面は、足場を造る度びに、新しい輝きを壊れた断面から現した。臙脂《えんじ》色の千鶴子の姿が尾根の上に全貌を現したときは、来た峰の上に折れまがった長いその影を取り包んで、七色の彩光が氷の面面に放射していた。
「お疲れになったら、あたしが先に行きましてよ。そう仰言って。」
と千鶴子は矢代の疲労の色を見てとって云った。
「少少疲れましたね。あなたは山登りはお上手ですか。」
「幾らかだけど、でも矢代さんよりはお上手らしいわ。」
「何んでも僕の方が少しずつ負けなんですね。これや日本人の特性かな。」
と矢代は云って腰を叩きながら笑った。千鶴子はちらりと微笑をもらしたかと思うと両肱を後ろにつき、曲げた膝にカメラを受けとめ、同じ微笑を崩さずさっと氷の斜面を辷り下った。下にいた矢代は受けたそうな手つきであったが、ねっとり汗ばんだ掌をズボンで拭き拭きまた断層を飛び越えた。
「ここのことかしら、あたし、
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