似ていた。矢代は身を切り落されるような切実な快感に疲れも忘れさらに続く閃光を待つのだった。稲妻に照し出される度に表情を失い、白い衣の中でい竦んだ雌蕋に見える千鶴子が、矢代には美しかった。
「あたし今夜は眠れないわ。雷が一番恐ろしいの。」
「じゃ、この部屋でやすんでらっしゃい。良い時刻が来たら起して上げますから。」
千鶴子は聞えたのか聞えぬのか黙ってやはりそのまま動かなかった。間もなくだんだん雷は鎮まって雨も小降りになって来ると空気が一層冷えて来た。千鶴子の顔は再び生気を取り戻して動き出した。雨が全くやまったとき二人は久慈にあてて、チロルの山の恐ろしさ美しさを寄せ書きしてまた遅くまで話し込んだ。
少しの雲もない朝である。ロココ風な等身大の肖像画のかかった食堂で矢代は千鶴子と食事をした。朝の日光がもう白い食卓の薔薇の上まで拡っている部屋の、旅客の誰もいない遅い朝食も、二人には却ってのびのびとした気楽さだった。食事をすませてから二人は街へ出た。澄みわたった空に浮き上ったまま、触れんばかりに街を取り包んでいる氷河は、海浜に連り立った爽やかな白い建物を見る思いであった。しかし、それも長く
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