真を撮りにいらしったんですのよ。あの方、お写真の方が専門だから、いろいろな角度からお撮りになっているうちに、とうとう鳩の糞のいっぱいある地面へ仰向きに寝転がって、上へカメラを向けたの。そしたら、傍で見ていたアメリカの観光客の一人が、自分もその通りに仰向きに寝て撮ってみてるの。」
矢代もおかしくなってつい笑いながら云った。
「塩野という人は、なかなか気持ちのいい方ですね。まだ長くこちらにいらっしゃるんですか。」
「何んですか、もうすぐ帰るようなこと仰言ってたわ、ノートル・ダムを撮ったのを全部集めて本にしたら、もうそれでいいんですって。」
もう日本へ帰るのだという人のことを聞く度びに、矢代は羨ましい気持が失せなかった。
「千鶴子さんはいつごろ帰る予定ですか。」
「あたしはいつだっていいんですのよ。ただね、暇なうちに一度こちらを見ておかないと、女ですから、見る機会がなくなるでしょう。」
「じゃ、なるたけ今のうちに、いろんな所を廻られる方がいいな。でも、よく御両親があなた一人を放されたものですね。」
と矢代はいつも訊き忘れていた疑問を自然に訊ねてみるのだった。特別に信用されている自分を説
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