を飲んでから、ホールで踊るんだけど、でも、壁なんか綺麗なものね。タペストリも皆ゴブラン織で、ルネッサンス時代の大きな彫像が置いてあって、ほんとに素晴らしいクラシックよ。」
書生には少し不似合なこんな話を矢代はふむふむと興味をもって聞きながら公園へ這入った。すると、千鶴子とよく坐るベンチの方へ足が自然に動いていった。鉄の卸問屋の次女である千鶴子は金銭に不自由がないとはいえ、パリの最高級のサロンへ出入すれば予期しない贅沢な心も植えつけられるであろうが、若い時代に人の見られぬものを見ておくのも、思い残さぬ後の慰めとなって、心も休まるであろうと矢代は羨しく思うのだった。
「あなたはサロンへなんか出這入りするようになられちゃ、僕たち話し難くなりますね。」
と矢代は笑って空を仰いだ。
「そんなものかしら、でも、あんな所へ始終いってる男の方たちは、気骨が折れると思うわ。あたしたち女はただじっとしてればいいんだけど、男の方は家へ帰ると、もう骨なしみたいに、ぐったり疲れてらっしゃることよ。」
「塩野君なんか、あれでサロンの技術は上手いんですかね。」
「あの方は気軽な方だから、どこでもさっさとやっ
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