になる癖が出て、捻じあい、絡まり、啀みあい、果てしもなく争った外国での二人であった。つまり、矢代と久慈との二人の方が、千鶴子と矢代や、真紀子や久慈より、はるかに深い夫婦だったといって良い。その片割れの一人も先ず無事ここに帰って来て、笑顔を初めて矢代の前に見せたのが、今だった。


 打水で湿した平目の石に夕闇が降りていた。上衣を脱いだ客たちの集りから洩れた灯明りに、紫陽花の一株がぼっと白くにじみ出ている。初秋の夜もこの料亭の庭ではまだ暑かったが、藤棚に下った実の青さが、それぞれの客に何か物を想わせる涼しさを誘った。それは人の忘れていたもので、沈黙の間、久慈もふと立ってその実に触れたくなった青さだった。
 最後の客の東野が真紀子をつれて顕れたのはそのころである。彼は廊下の端から、久慈の方を一寸見てから、大跨につかつかっと近よって来ると、
「どうだ。」
 と、一言どさりと真向いに坐った。二人はどちらも眼を脱さず、じっとしたまま、笑いもしなければ口も動かそうとしなかった。何かの仕合いのように東野の幽かに微笑を含んだ眼もとが、暫くは、脱そうとする久慈の視線をぴたぴたと抑えて追っていく。視ている
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