ろんなお話の末に久慈さんね、真紀子さんと会わせるようなら明日は出ないって。でも、塩野さんはああいう方でしょう。ですから、もう一度真紀子さんと君結婚し直せって、仰言るし、――これで、今夜もし真紀子さんいらっしゃれば、どうなることかしら。」
「真紀子さんなら来るかもしれないなア。それや来るね。」
しかし、矢代は自分たちのことより他人の身の上を心配する、そのようなもどかしさも、今なお単刀直入に切り出したくはなく、当分はこうしている以外に月日はたたぬのだと思った。そして、それはどういう理由からでもない。これで良いのだった。一番適当な方法を講じて進んでいる以上、現在の成り行きを変えるのも愚かな考えで、その決断も不用だった。次第に押しよせて来る外界の波を避けようとすることが、下らぬ躊躇に見え、自分の目差す針路だけは他人のものではないと思われた。
剪裁されたばかりの青枝を跨ぎ、寛ぎの出て来る小丘を降りてからもう病葉の散る橡の樹の下へ出ると「新アジヤ」という東野の演題がまた矢代に泛んで来た。夫人を亡くした東野の針路も、定めしその題の示すところに苦心の光鋩を集めたものだろうと察せられたが、東野のみ
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