野から矢代に云って来た。矢代は千鶴子と会う打合せもすませ、その日の夕食前に公園へ行ってみると、聴衆の列は乾いた広場にもう長くつづいていた。東野の新アジヤという演題は外交関係の講演者の名の多い、終りの方に見られた。日ごろの東野には似合わしからぬ演題であるだけに、彼を知るものにとっては、何か期待を持たせる題でもあった。
「奥さんを亡くして、新アジヤというのは、何か意味があるのだろうな。」
矢代は千鶴子に会ったとき、尾を曲げた聴衆の列を眺めてふと悲しい気持ちに誘われた。西日のまだ高く雲を灼いている残光に染って、薄水色の服色に包まれた千鶴子の頬は明るく輝くようだった。篠懸の幹の下を池の方へ廻っていく半面の影は、いつもになく沈みがちだった。日ぐらしの声の鋭くひびきわたる樹の枝ぶりを仰ぐ眼もとにも、気分を引き立てようと努めるときの固い表情もあって、苦労のある一夜になりそうだなと矢代は思った。
「久慈から手紙を貰ったきりで、まだ僕は会わないんだが、あなたもでしょう。」
「昨日塩野さんといらして下さいましたの。」
ためらいもあって、その返事を避けたいらしい弾みのない詰った千鶴子の声が、矢代には気が
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