のことも同様二つに別れて相争うにちがいないのです。これはどう仕様もありませんね。」
 一同黙って言葉を発しなかった。屏風の金色を映した舞妓の管だけ、ひとり、さざめく水のようにひらひら黒髪の中で揺れていた。
 それは絶えまなく繊細にゆらめきつづけ、囁き交している部屋のひそやかな呼吸にも似て見えた。
「夢窓国師は吉野方と高氏と、両方から来いと引っ張り廻されたんだから、龍安寺の石も、そんな定律の苦しみをひそめているかもしれないなア。」
 と矢代は部屋の中へ這入って来つつ云った。そう云いながらも、彼は自分と千鶴子の間に横たわっている宗教の相違や、パリ以来、久慈と衝突しつづけた文明観の解釈の相違についてなど、いびつな心の違いとなってまた泥んで来たりした。
「しかし、槙三君のようなことが、実際上の数学で正しいとなると、一寸こ奴、困ったことになるね。」と塩野は頭を自棄に掻きあげた。「Aから見ればBが不正で、Bから見ればAが不正なら、世の中で正しいことって何一つも無くなるわけじゃないか。ね。」
「ですから、僕は排中律の定律というものは、必ずどこかに間違いがあると思うのです。もっとも、この定律を認めない
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