日日のように思われて来るのだった。それは実に間のぬけた、迂濶な生活のように思われて残念だった。
「ともかく、まア、行きなさい。どこにいようと同じだよ。」
 と狩衣姿が云う。
「それはそうだとしても、他に面白いことといって、ありません。」
「そういうたものでもないさ。」
 山は黙ってそのときちょっと京都の空の方を見たように思った。矢代は、その山のいつも見て暮していたのは、やはり先祖の故郷のあるその視線の方向だったのかと思い、つい自分も見た。
「俺はここで死んだが、なに、これは一寸、休ませてもらっただけだったよ。」
 こういうようにも見える山は、少し多弁になりかかろうとして、にこにこッとすると、またどういうものか口を閉じ、
「さア、もう行きなさい。」
 と顎で彼を押す風だった。
 矢代はまだ去りがたく足も鈍ったまま車に乗った。日はもう没していて、揺れ変って来た芒の葉の向うから生温い夜風が吹いていた。そして、蛙の鳴く声が次第に高く路の両側から起って来て、そこをすたすた急いで走る車夫の足音も冴えて来たが、まだ彼は帽子をとり車の上から振り返っては幾度もお辞儀をしつづけた。

 その夜、京都へ向う
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