まの折、その当の叔父が死に、矢代の父も亡くなった。このような父の美徳の後、矢代の母が出て来て骨を据え、忘れた記憶を揺り動かせば、親戚間の紛糾は火の手をあげて来る惧れもあった。
父の死の直後、矢代は新しく自分のものになりそうな郷里の家の処理について、考えないわけではなかったが、他のこととは異りこの一事に関しては母の黙している限り、彼から表情を閃かすことは仕にくいことだった。また、母が先だって彼を動かし、父の納骨を好機に家の所有を瞭らかにすることを命じても、あるいは彼から母に反対したかもしれなかった。勿論、自分の善人を意識にしたい矜りあってのためでもなく、むしろその反対の狡智にも似た、後ろめく覚えのする彼自身にも説明しがたい感情で、強いて云えば、無責任にただぼんやりとしていたいそれだけのことと云っても良かった。郷里も知らず父の代から不在の自分が、旅の半ばで引きかえし、故郷に無理を起すのは、却って所有の思いを失うにちかく、家そのものを失っても、思いを心にとどめて行く旅の途上は、振り返る家の景色も艶を失うことがない。人の家は、それぞれこうして心の奥底ふかく一つずつ持たれて来たのは、絶ゆること
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