、隠れた人影を乱すのもつまりはこちらが不注意なのであった。
 一同もそれを知っていると見えて言葉も云わず久慈についてぞろぞろ歩いた。すると、先頭に立った久慈は不意に途中で立ち停った。
「何んだ。」と矢代は訊ねた。
「道を間違えた。これや、たいへんな所へ来た。」
「しかし、あそこの提灯はたしかに僕らのボートだよ。」
「いや違う。」
 こう云いながらも久慈は水際の方へ降りて行こうとすると、
「あツ。」
 と云ってまた立ち停った。矢代は久慈の傍へよって行ってあたりを見た。一抱えもある丸い石のような塊が点点として散ったままじっとしていたが、よく見ていると、かすかにどれも少しずつ動くのが感じられた。
「ここ白鳥の巣だわ。」
 とアンリエットが上の方から云った。
「何アんだ。そうか。」
 と久慈も急に元気な声になった。今まで恐ろしそうにしていた千鶴子も降りて来ると、矢代の肩に掴まりながら白鳥の群れを覗いてみた。どこが水か芝生か分りかねる暗さの中で、矢代は千鶴子の重みを肩に受け何事か約束が果されつつあるように感じられ、そのまま立ち停っていつまでも白鳥の群れを眺めるのだった。
「白鳥の巣なんてあたし見
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